今回は、トレーナーが近くにいない学生アスリートや親御さんに向けて、足関節捻挫に関する情報をお届けします。このブログを読むことで、捻挫とは何か、足関節捻挫の種類とその違い、治癒にかかる時間について書いていきます!
捻挫とは?
捻挫は、関節の靭帯が通常の範囲を超えて引き伸ばされたり、引き裂かれたりすることで発生する怪我です。特に足首の捻挫はスポーツ活動中によく見られます。足関節捻挫は、靭帯の損傷の程度により軽度(Grade 1)、中程度(Grade 2)、重度(Grade 3)に分類されます。
Grade 1:軽度の捻挫
損傷の程度:
- 靭帯がわずかに伸びた状態で、部分的な微細損傷があります。
- 損傷率は約0-25%。
症状:
- 軽度の痛みと腫れ。
- 若干の可動域制限があるが、歩行は可能。
- 関節の不安定感はほとんどない。
治癒期間:
- 2〜4週間。
Grade 2:中程度の捻挫
損傷の程度:
- 靭帯が部分的に断裂している状態。
- 損傷率は約25-75%。
症状:
- 中等度の痛みと腫れ。
- 明らかな可動域制限。
- 関節が不安定で、歩行が困難。
- 触診すると痛みが増す。
治癒期間:
- 4〜6週間。
Grade 3:重度の捻挫
損傷の程度:
- 靭帯が完全に断裂している状態。
- 損傷率は75-100%。
症状:
- 強い痛みと著しい腫れ。
- 関節が非常に不安定で、歩行が困難または不可能。
- 靭帯の完全断裂により、関節が動きやすくなる(不安定感が顕著)。
治癒期間:
- 6〜12週間以上(場合によっては手術が必要)。
3種類の足関節捻挫
足関節捻挫は、足首の靭帯が損傷する怪我であり、主に以下の3種類に分類されます:
1. 内反捻挫(Inversion Sprain)
- 概要: 足首が内側に曲がることで発生し、外側の靭帯(前距腓靭帯や踵腓靭帯)が損傷します。
- 前距腓靭帯 – 足首が下に落ちた状態で捻った時に痛めやすい
- 踵腓靭帯 – 足首が90°に近い状態で捻った時に痛めやすい
- 発生率: 最も一般的なタイプで、約85%の足首の捻挫がこのタイプです。
- 症状: 足首の外側に痛みと腫れが生じることが多い。
- 内足首に骨挫傷(骨と骨がぶつかり合う打撲)が起きる事も多く、骨挫傷の方が痛みは続きやすい
2. 外反捻挫(Eversion Sprain)
- 概要: 足首が外側に曲がることで発生し、内側の靭帯(三角靭帯)が損傷します。
- 発生率: 比較的稀なタイプ。
- 症状: 足首の内側に痛みと腫れが生じることが多い。
- 内反捻挫と比べると、回復に時間がかかることが多い。
3. 高位捻挫(High Ankle Sprain)
- 概要: 脛骨と腓骨をつなぐ靭帯(前脛腓靭帯)が損傷します。通常、足首が外側に捻られた際に発生します。
- 発生率: 他のタイプに比べて稀で、特に接触スポーツで発生することが多い。
- 症状: 足首の上部に痛みがあり、回復に時間がかかることが多い。
三角靭帯捻挫が内反捻挫と比べて治りにくい理由
三角靭帯捻挫(内側捻挫)は、内反捻挫(外側捻挫)と比較して治りにくいとされています。以下の理由がその根拠となります。
- 靭帯の構造と強度の違い:
- 三角靭帯は、内側の強靭で厚い靭帯であり、4つの部分(前脛舟靭帯、前脛距靭帯、後脛距靭帯、踵舟靭帯)で構成されています。この複雑な構造のため、損傷が広範囲に及ぶことがあり、回復が遅れる原因となります (BJSM) (Advanced Physical Therapy CT)。
- 血流の違い:
- 内側靭帯への血流が比較的少ないため、治癒に必要な栄養と酸素の供給が限られています。これに対して、外側の靭帯は血流が豊富であり、治癒が速やかに進む傾向があります (PhysioSpot)。
- 損傷の深刻度:
- 三角靭帯の損傷は通常、強い外力を伴うため、骨折や関節の脱臼といった他の重篤な合併症を伴うことが多いです。これに対し、内反捻挫は比較的軽度の力で発生することが多く、靭帯損傷のみで済む場合が多いです (Advanced Physical Therapy CT)。
- 安定性への影響:
- 三角靭帯は足関節の内側安定性を提供しており、この靭帯が損傷すると、足首の全体的な安定性が大きく損なわれます。そのため、リハビリテーションが長期化しやすいです。内反捻挫では、外側の靭帯が損傷しても他の靭帯や筋肉が代償できることが多いため、安定性の損失が比較的少ないです (PhysioSpot)。
- リハビリテーションの複雑さ:
- 三角靭帯損傷のリハビリテーションは複雑であり、慎重な負荷管理と特定のエクササイズが必要です。これに対して、内反捻挫のリハビリは比較的標準化されており、迅速に進めることが可能です (BJSM) (Livestrong.com)。
これらの理由により、三角靭帯捻挫は内反捻挫と比べて治りにくいとされています。適切な治療とリハビリテーションが重要です。
高位ヒール捻挫が内反捻挫と比べて治りにくい理由
高位ヒール捻挫(高位捻挫)は、脛骨と腓骨をつなぐ靭帯が損傷する怪我であり、他のタイプの足首捻挫と比較して治りにくいとされています。以下の理由がその主な要因です:
- 損傷の部位の複雑さ:
- 高位捻挫では、脛骨と腓骨を結ぶ靭帯が損傷します。この靭帯は足首の安定性を保つために重要であり、損傷が重篤になることが多いです。この部位の靭帯損傷は、通常の足首捻挫と比べて修復が難しいです (BJSM)。
- 血流の制限:
- 前脛腓靭帯への血流は比較的少ないため、治癒に必要な栄養と酸素の供給が限られています。このため、治癒プロセスが遅れることがあります (Livestrong.com)。
- 診断の困難さ:
- 高位捻挫は、通常のX線検査では見逃されることが多く、MRIやCTスキャンなどの詳細な画像診断が必要です。適切な診断が遅れることで、治療の開始も遅れる可能性があります (BJSM) (Advanced Physical Therapy CT)。
- 治療の複雑さ:
- 高位捻挫は、しばしば手術が必要となる場合があります。手術後のリハビリテーションも複雑であり、慎重な負荷管理と特定のエクササイズが必要です。これに対し、通常の足首捻挫は保守的な治療で対応できることが多いです (Advanced Physical Therapy CT)。
- リハビリテーションの長期化:
- 高位捻挫のリハビリテーションは長期間を要し、完全な機能回復には数ヶ月以上かかることがあります。これは、足首の全体的な安定性を回復するために、筋力強化とプロプリオセプショントレーニングが必要だからです (PhysioSpot)。
- 再発リスク:
- 高位捻挫は再発のリスクが高く、再発を防ぐために適切な予防策が必要です。再発が続くと、慢性的な不安定性や関節炎のリスクが増加します (Advanced Physical Therapy CT)。
これらの要因が、高位捻挫の治癒を難しくし、リハビリテーションを長期化させる原因となっています。適切な診断と早期の治療が重要であり、専門的なリハビリテーションが推奨されます。