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投球・送球で起きやすい怪我 – 肩関節不安定症

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肩関節不安定症は、特に野球や投球動作を繰り返すスポーツ選手に多く見られる障害で、肩関節が安定せず、動きが不安定になる状態です。この不安定性は肩の動作中に痛みや違和感を引き起こし、スポーツパフォーマンスにも影響を与えることがあります。

肩関節不安定症とは?

肩関節不安定症は、肩の構造(特に靭帯や関節唇)が損傷したり、緩んだりすることで、肩関節が不安定になる状態です。肩関節は本来、非常に可動域が広い一方で、安定性が他の関節に比べて低い構造になっています。投球や送球の繰り返しで関節に大きな負担がかかると、関節を安定させる靭帯や軟部組織に緩みや損傷が生じ、不安定症が発生します。

肩関節不安定症には、以下のようなタイプがあります:

  1. 前方不安定症:肩が前方向に不安定になる状態。最も多く見られる。
  2. 後方不安定症:肩が後方向に不安定になる状態。
  3. 多方向性不安定症:前後方向だけでなく、複数方向に不安定になる状態。

これにより、肩が抜けるような感覚や、関節がズレるような違和感を感じることがあります。また、肩の安定性が低下するとローテーターカフに過度な負担がかかり、腱や筋肉の損傷リスクも増加します。

投球フェーズのどのタイミングで起きやすいか?

肩関節不安定症は、投球動作の「Late Cocking(後期コッキング)」と「Follow Through(フォロースルー)」で特に起きやすいです。

Late Cocking

Late Cocking(後期コッキング)

  • 概要: このフェーズで肩は最大外旋位置に達し、前方へのストレスがかかりやすくなります。肩の安定を保つためにローテーターカフや関節唇に大きな負荷がかかり、不安定性があると肩関節が前方にズレる感覚や痛みが発生しやすくなります。
  • 肩への負担: 前方不安定性がある選手は、肩が外旋された状態で肩関節が前にズレやすくなり、損傷のリスクが高まります。
Follow Through

Follow Through(フォロースルー)

  • 概要: ボールをリリースした後のフェーズで、肩は減速し、腕が内旋されます。この減速期で肩が不安定だと、後方や多方向に負担がかかり、不安定性による痛みや違和感が生じることがあります。
  • 肩への負担: このフェーズでは、肩が不安定であると関節が後方や下方に動きやすくなるため、後方不安定性がある場合に痛みが発生しやすくなります。

予防エクササイズ

肩関節不安定症は、生まれ持った関節の緩さや、肩脱臼含む関節を安定させている靭帯・関節包・関節唇損傷の影響が大きいです。

筋肉・腱の損傷と違って、靭帯は収縮性がほとんどないため、一度緩んでしまうと手術をしない限り靭帯による関節の安定力は見込めません。

保存療法で行く場合は、肩関節周辺の筋肉強化と、肩関節による可動域確保ではなく胸郭から可動を作り出す身体の使い方を学ぶ必要があります。

肩関節の安定性を確保できないと、ローテーターカフ損傷やインピンジメント症候群を起こしやすいので、しっかり強化していきましょう。

大事にしたい項目・エクササイズ/トレーニング

  • 左右の胸郭の動きの分離と肩関節との連動
  • 肩甲帯YTWA
  • ローテーターカフエクササイズ
  • 腕立て伏せ
  • 逆立ち
  • サイドプランク

⚠️こちらは解説・指導風景動画含め、一部有料コンテンツとなっております。

左右の胸郭の動きの分離と肩関節との連動
肩甲帯YTWA
投球前肩エクササイズ – チューブ

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下記 トレーナー向け

肩関節不安定症かどうかの評価ができるスペシャルテスト

肩関節不安定症を評価するために使用される代表的なスペシャルテストをいくつか紹介します。

  1. アプレイ・サインテスト(Apprehension Test)
    • 概要: 被験者が肩を90度に外転し、外旋させると、前方不安定性がある場合には不安感や痛みが生じます。
    • 方法: 被験者を仰向けにし、肩を90度に外転、肘も90度に曲げた状態で肩を外旋させます。不安や痛みを感じた場合は前方不安定症の可能性が示唆されます。
  2. リロケーションテスト(Relocation Test)
    • 概要: アプレイ・サインテストで不安や痛みが生じた場合、後ろから肩を押さえることでその症状が軽減するかどうかを確認します。
    • 方法: アプレイ・サインテストと同じ姿勢で肩を後方から押さえながら外旋させます。症状が軽減すれば、前方不安定性がある可能性が高いです。
  3. サルカスサインテスト(Sulcus Sign Test)
    • 概要: 多方向性不安定性を評価するテストで、腕を引っ張ると肩の横に隙間ができる場合に陽性となります。
    • 方法: 被験者の腕を下に引っ張り、肩関節の前側に隙間(サルカス)が生じた場合は、不安定性が示唆されます。特に多方向性不安定症を確認するためのテストです。
  4. プッシュプルテスト(Push-Pull Test)
    • 概要: 後方不安定性を確認するテストで、肩が後方に動く際の不安感や痛みを確認します。
    • 方法: 肩を90度に外転、肘も90度に曲げた状態で、前方から肩を引き、後方から押しながら肩の動きを確認します。肩が過度に後方へ動く場合は、後方不安定性の可能性があります。

肩関節不安定症は、早期の発見と適切なケアが非常に重要です。トレーニングで肩周りの筋力や柔軟性を高めるとともに、投球フォームや肩甲骨の動きを改善することが、不安定性を予防しパフォーマンス向上にもつながります。

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