日本プロ野球界(NPB)初の女性アスレチックトレーナー/女性トレーニングコーチとして、横浜DeNAベイスターズに入団して以来、
「NPBでトレーナーとして働くには、どの資格をとったらいいですか?」
という質問を沢山いただきます!
アメリカでは、スポーツ現場で働きたい!と思った時、
治療や怪我の評価などを行うメディカルトレーナーなら、BOC-ATC
ウォームアップやトレーニング指導をしたいなら、NSCA-CSCS
というように必須の資格がしっかり絞られているのですが、日本スポーツ現場、特に野球という
スポーツ現場で働く為に必要な資格の選択肢はたくさんあり迷いますよね。。。
なので、日本のプロ野球チームでトレーナー関連の業務で活躍している方たちが持っている資格と、
- 資格の特徴
- 資格取得の条件
- 資格取得までの時間
- どの資格をとったらいいか迷っている学生に対して薦める資格
以上について説明していきます!
目次
- 資格の種類
- 各資格の特徴・取得条件・取得にかかる時間
- メディカルトレーナーとは?
- トレーニングコーチとは?
- NPBで働く為にどの資格がおススメなのか?
- 私が個人的におススメする進路は
資格の種類
まず日本では、スポーツ現場で選手の身体に関してのサポートをしている人達のことを一括りで「トレーナー」もしくは、「スポーツトレーナー」と呼ばれる事が多いですが、「野球」というスポーツという中に投手・野手があるように、大きく分けて2種類の業務があります。
- メディカルトレーナー: 治療・怪我の評価・リハビリを行う
- 鍼灸師
- あん摩マッサージ指圧師
- 柔道整復師
- アスレチックトレーナー (JSPO-AT, BOC-ATC)
- 理学療法士
- トレーニングコーチ: 健常選手のパフォーマンスUPを目指す
- NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)
- 日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者資格(JATI-ATI)
プロ野球チーム各球団の募集でみると、毎年
メディカルトレーナーで0~2人
トレーニングコーチで0~2人
の募集になる事が多い!
各資格の特徴・取得条件・取得にかかる時間
メディカルトレーナーとは?
メディカルトレーナーとは、「メディカル」と言われる様に、
- トリートメント(疲労回復 and/or アライメント調整)
- 治療(痛みを取る and/or 治癒力UP)
- 怪我の初期対応や評価
- リハビリテーション etc.
身体のケア・治療を専門とする方達です!
身体の状態が万全ではない状態を元の状態に戻すために活躍するのが、このポジションで働いている方達です!
では、各資格について紹介していきたいと思います!
続きは有料コンテンツです。
ご興味がある方はこちらからご購入ください。
※支払い完了後、閲覧パスワードのご連絡をいたします。手続きに数時間かかります。ご了承ください。
1.鍼灸師
鍼やお灸を使って人間の持つ自然治癒力を引き出して治療したり、病気の予防をする治療家。
条件と期間
鍼灸学科の大学(4年)か、鍼灸の専門学校(3年)に通う事で国家試験を受ける事ができる。
2.あん摩マッサージ指圧師
徒手で、身体を押す・撫でる・揉むという技術を用いて、筋肉の凝りや痛みをとる治療家。
条件と期間
あん摩マッサージ指圧師の専門学校 (3年)に通う事で国家試験を受ける事ができる。
※鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師のどちらか一方だけ取得するより、両方セットの学校も多く、両方取得して治療院で働かれている方が多い印象です!
3.柔道整復師
骨折・脱臼・打撲・捻挫など、保険が適応されるような外傷の怪我に対して、手技・固定 (包帯/テーピング)・リハビリテーションで治療していく治療家。
「骨接ぎ」や「接骨院」と呼ばれる所で働かれている方が多い。
条件と期間
柔道整復師の資格取得できる4年制大学(4年)か専門学校(3年)に通う事で国家試験を受ける事ができる。
4.理学療法士(PT)
身体に障害がある人や手術後の患者に対して、医師の指示の下、運動療法(リハビリテーション)や物理療法(治癒を促す機械を使った治療)を使って身体運動機能の回復・向上を行う専門家。
病院のクリニックで働かれている方が多いです。
条件と期間
理学療法士専攻の4年制大学か専門学校(3年)に通う事で国家試験を受ける事ができる。
5.アスレチックトレーナー(AT)
安全管理(雷や熱中症など)、スポーツ障害予防、受傷時の初期対応(救急対応含む)、リハビリテーション等、グラウンド/フィールドレベルでの対応がメイン業務。
※他のメディカルトレーナーの資格と違って民間資格。
日本のスポーツ界では、以下のどちらかの資格で活躍している人が多い。
・日本の JASO-AT
・アメリカの BOC-ATC
日本スポーツ協会(JSPO)の公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
日本のアスレチックトレーナーの資格で、資格取得には2つの方法があります。
条件と期間
1.日本スポーツ協会や加盟団体等が開催する養成講習会を受講(1~5年)
養成講習会を受けられるのは、満20歳以上で、JSPO、もしくは、JSPOが認める団体から推薦された上で、受講者選考基準を満たした人のみ。
※この方法で取得する方は他のトレーナー関連の資格取得済みの方が多い。
2.JSPOがカリキュラムを承認する大学・専門学校に入学する(4年)
└この先、大学/専門学校に進学予定の学生の方はこちらがおススメ!
米国アスレティックトレーナー資格認定委員会公認アスレチックトレーナー (BOC-ATC)
アメリカで、医師の指示の下、治療や医療サービスを提供する医療従事者で、米国医師会(AMA)によって医療業として認められているメディカルトレーナー。
※日本で働く場合は、医療業(国家資格)としては認められていない。
引用:Japan Athletic Trainer’s Organization
条件と期間
・アスレティックトレーニング教育認定委員会(CAATE)公認の大学院で
アスレチックトレーニング学科(Master in Athletic Training)卒業。
Master in Athletic Training卒業する方法は2つ。
1.大学3年+大学院2年プログラムという、
学士の段階からMaster in Athletic Trainingを
卒業する事を目標にした生徒向けのプログラムを
卒業する場合、最短5年。
※立命館大学のGlobal Athletic Trainingプログラムのように、5年プログラムの大学3年半を
日本で勉強出来るプログラムも出てきています!
いきなりアメリカで英語でATの勉強をするのが
不安な方、学費・生活費を極力抑えたい方は、
日本の大学で土台を作ってから渡米するのも
ありかと思います!
2.他の修士号同様、学士号取得後に
Master in Athletic Training に入学する場合、
通常6年。
※学士号を4年より短く卒業する生徒もいる為、
通常と表記。
・プログラム卒業後、資格認定委員会 (BOC) が
開催する認定試験に合格する
BOC-ATC取得に関わる団体のWebサイト
・National Atheltic Trainer’s Association (NATA)
・Board of Certifitication (BOC)
・Commission on Accreditation of Athletic Training Education (CAATE)
・立命館大学グローバルアスレティックトレーニング(GAT)プログラム
トレーニングコーチとは?
「トレーニングコーチ(SC)」と言われるポジションで働かれる方は、
・ストレングス: 筋力UPやパワーUPの為のトレーニング
・コンディショニング: ウォームアップ、ランニング、エクササイズ
ベストパフォーマンスを発揮できる状態になるように指導する専門家です。
両方のアプローチから、怪我をしにくい体作りも目指します。
SCは、よりパフォーマンスが出せる状態に
もしくは、この先悪い状態(パフォーマンスダウン・怪我)にならないような身体づくりがメインの仕事と考えるとわかりやすいかと思います!
※メディカルトレーナーは国家資格が多いですが、トレーニングコーチは現状全て民間資格です!
その為、メディカルトレーナーは各資格で法律的に行ってよい業務がかなりはっきりと分かれていますが、トレーニングコーチの各資格では、資格取得の為に受ける講習の内容の濃さ・難易度・取得までにかかる時間などに違いはあるものの、取得後に行える業務内容に制限はありません。
極論パーソナルトレーナーとSCとの境目ってあまりない為、SC関連の資格はたくさんあります。
なので、日本のスポーツ現場でSCとして働いている人たちが持っている事が持っている事が多い資格をここでは紹介いたします。
アメリカのストレングス&コンディショニング協会(NSCA)認定の資格が2種類
1.NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)
※SCの資格で一番定番の資格!
選手のパフォーマンスをあげる為に、科学的な知識の習得として、
・スポーツ別の測定/テスト
・安全かつ効率的なトレーニングのプログラミング
・シーズン別のメニューの組み方
・栄養学
・怪我予防
条件と期間
4年大学卒(学問問わず)、もしくは、
高度専門士の称号を持っていれば
いつでも受講可能(AED/CPRの資格が必要)。
他のトレーナー系の勉強をされてる人は、数ヶ月の勉強で合格する人も多い。
アメリカの資格ではあるが、NSCAジャパンを
通して日本語で勉強&試験受講可能。
2.NSCA認定パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
スポーツ現場のSC的な内容よりは、フィットネス・パーソナルトレーナーの資格だが、NSCA-CSCSより難易度が優しい。
・個別のニーズに対しての評価含むプログラミング方法
条件と期間
満18歳以上で、高等学校卒業していればいつでも受講可能(AED/CPRの資格が必要)。
日本語で勉強&試験受講可能。
日本のトレーニング協会が認定しているSCの資格だと、
・日本トレーニング指導者協会(JATI)認定トレーニング指導者資格(JATI-ATI)
条件と期間
短期大学・4年制大学(学問問わず)を卒業していれば、資格取得に必要な養成講習会受講可能。
高等学校卒業でも3年以上の運動指導歴があれば
受講可能など、受講に必要な学歴/経歴に関して、ホームページに細かく記載。
※養成講習会開催は1年に1回と時期が限定されていますので、開催時期の確認を忘れずに。
(トレーナー関連の資格取得者は免除措置あり)
参照:JATI認定トレーニング指導者資格(JATI-ATI)の取得方法
NPBで働く為にどの資格がおススメなのか?
「NPBで働くにはどの資格をとったらいいですか?」
という質問をよく頂きます。
最近は、トレーナーの公募をしている球団も多く
募集要項を見て頂いたらわかると思いますが、
「メディカルトレーナー」か「トレーニングコーチ」の違いでの募集はあれど、
何か一つの資格にフォーカスして募集されていることは少ないです。
その為、残念ながら
この資格を持っていると有利!!
という資格は日本のプロ野球界では、
現状ありません。。。
その為、この質問を頂いた時は、
「何が必要か?」
ではなく
「何がしたいか?」
を考えてください。っとお伝えしています!
ただ、実際トレーナー業務ってとてもざっくりしていますし、アメリカと違って学生の時にスポーツ現場で働いているトレーナーさんと関わる機会が少ない分、どんな業務しているかわかりずらい。。。
だから、勉強を始めてみないと何がしたいのかわからない事って多いですよね。
なので、この先スポーツ現場でトレーナー関連の業務をしたい!!!
でも、どのように働きたいか?
「メディカルトレーナー」と「トレーニングコーチ」どちらの仕事をしたいか?
それすらも正直まだイメージもつかないし、わからない。。。
そんな学生さんに、
私が個人的におススメする進路は
国家資格(鍼灸師・あん摩マッサージ師・柔道整復師・理学療法士)
特に鍼灸師!
+
アスレチックトレーナー (AT)
の両方の資格を取れる学校に行く事です!
上記で説明したように、SCの資格は民間資格で、4年制大学卒業もしくは、国家資格とアスレチックトレーナーの学校卒業してれば、いつでも受講可能であり、国家資格やアスレチックトレーナーの資格取得までの時間(最低3年)と比べても資格取得までに時間はかかりません。
SC関連の大学(4年)に行ってトレーニングコーチの資格を取った後、
やっぱりメディカルトレーナーの資格が欲しいと思ったら、さらに3〜4年かかります。
それに、やはり法律で許可されている、
国家資格は民間資格より強いです!!
※いくら腕があっても、医者の資格を持っていない人が手術出来ないように、法律で許可されている国家資格を持っているというのは、一つの強みになります!
そして、その中でも鍼灸師をオススメする理由としては、唯一鍼やお灸という、自分の手以外の物を使ってアプローチする資格だからです!
※上記の医者の例そのままで、医師免許もってない人がメスを使えないのと同じで、鍼灸師の資格を持ってない人は鍼でのアプローチは出来ないからです!
あん摩マッサージ指圧師のマッサージは、もみほぐしとの境目が曖昧だったり、ストレッチや今後習うであろう徒手でのアプローチである程度代用する事は可能です。
柔道整復師の外傷へのリハビリは、PTやATも出来ますし、勉強すれば対応可能な分野になります。
(脱臼などの)整復が法律で許されてるのが強みですが、野球界で脱臼の頻度そうそう高くありません。
理学療法士は、術後や患部へのリハビリにすごく特化されていますが、オススメしているATと被っている範囲も多いので、PTとATの組み合わせは少々勿体無い気もします。
以上から、メディカルトレーナーとトレーニングコーチ、どちらがいいかわからない方には、ひとまず国家資格 (特に鍼灸師) を取ることをおススメいたします!
では、なぜ国家資格にプラスして民間資格のATの資格もある方がいいのか?というと、
安全管理の環境準備や、フィールド/グラウンド上で起こるアクシデント
(特に脳震盪や脊椎損傷などの生死に関わるアクシデント)
に強いのが、アスレチックトレーナーだからです!
コンタクトが少ない野球は、
- 他のスポーツよりも脳震盪などが起こる事が少ない事
- 試合頻度が高い為、治療家の需要が高いこと
以上から、ATの需要は低くくなりがちですが、
ある事で武器になります!
社会的にも、すこしずつスポーツ現場の安全管理に対してもフォーカスされてきているので、ますます需要は高くなると思います!
また、アスレチックトレーナーの資格は、
- アメリカンフットボール
- ラグビー
- バスケットボール
などのコンタクトスポーツでの需要が高い為、
スポーツ現場での経験を積むのにとても役に立つ資格です!
以上から、どの資格をとったらいいかわからない・迷っている方には
国家資格(鍼灸師・あん摩マッサージ師・柔道整復師・理学療法士)
特に鍼灸師!
+
アスレチックトレーナー
の2つセットを個人的におススメしております!
もちろん、最初からトレーニングコーチに進みたいと思っている方でも、
国家資格やATの資格をもっていて絶対に損はありません!
いくつか理由があります。
・日本のスポーツ現場では、経済的な理由からも ”スペシャリスト” より ”ジェネラリスト” の方が需要が高い為、SC~AT~治療までできる方がスポーツ現場で働ける可能性が広がる。
・メディカルトレーナーの知識もある為、メディカルトレーナーとのコミュニケーション&連携に役立つ。
・SC目線だけでなく、メディカル目線含めた、トレーニング・コンディショニングプログラムを作れる。
国家資格やATの学校に通いながら、現場で学生トレーナーとしてSC業務の経験を積んで、卒業後にSCとして働いている方もかなり多いです!!
最初からJATI-ATIの養成校やバイオメカニクスの分野に強い大学/学科に入って、ストレングスコーチの道に進む事は、”スペシャリスト”になる上でとても素晴らしい道です!
ただ、最初から進路変更を意識して進むのはどうか?
と思うかもしれないですが、勉強すればする程、
- いろんな分野の勉強をしたい!
- いろんな分野からアプローチしたい!
と思う事は普通で、その時の進路変更を考えると、
ストレングスコーチ → メディカルトレーナーへの進路変更よりも
メディカルトレーナー → ストレングスコーチへの進路変更の方が
金銭面的にも・時間的にも融通が利きますので、その辺を加味して進路を決めるとよいかと思います!
あくまで私の知りうる範囲での情報と経験、
現在の日本プロ野球界の特徴からの私見です!(^^)
参考になればと思います!!